関舶工/関小工が合同実施、50名参加
3年ぶり再開、関東圏の造・舶連携深化(海事特報記事転載)
関東舶用工業会と関東小型船舶工業会は3月28日、3年ぶりとなる優良事業所見学会および懇親会を合同開催した。今回の見学会先は修理ヤードの横浜工作所(本社・横浜市鶴見区)で、同社の二宮一也社長は関東小型船舶工業会の会長及び関東舶用工業会会員として活躍している。
当日は両団体から総勢50名が参加、工場見学後は、関東運輸局海事振興部の築山直樹船舶産業課長(4月1日付で東京運輸支局の首席船舶検査官に異動)による講演会も行われ、見学会終了後の懇親会では関東地区の造・舶間による情報交換などが盛んに行われた。
同社の創業は1920年(大正9年)。船のメンテナンスなどの修理業を中核事業に、ドックを利用した大型構造物の製作や、近年ではダム管理船などの新造船分野にも進出し新造船の設計から製造までを自社で一貫して行うなど、元気印の老舗企業だ。
さらに新分野では、ゴム製「油圧ホース管」の自社製造にも着手、さまざまなサイズオーダーで迅速対応を可能としたことで、欠品や納期対応などに困るユーザーにとっては救世主的な存在となっており、販路拡大にも成功している。船舶修理業が新造船建造にも挑戦し、さらに修理ヤードながら舶用メーカーとしての側面もあるという、まさに垣根を超えて活躍する新しい企業へと変貌している。
同社は近年、魅力ある会社づくりを推進しており、「デニム調デザインの作業着」や、福利厚生の一環として社員が気軽に使用できる「キャンピングカーの導入」、女性従業員がリラックスできる「女子専用更衣室の設置」、事務職員の「海上試運転の乗船体験」などを推し進め、クリーンで安全な工場の運営と風通しの良い社風を徹底している。
女子更衣室は
清潔・快適で、まるでホテルのような空間だ。
福利厚生の一環として社員が気軽に使用できる「キャンピングカー。
BBQ一式も用意されている。
新導入した200㌧クレーン車
最大長74.5m×幅19mの船舶に対応した船台
こうした取組が功を奏し、特に人材確保の面で大きな成果となって表れている。直近数カ月で109人もの面接応募者があり、優秀な人材確保に繋がっているそうだ。今年も新卒者3名が入社するなど、従業員採用では苦労する関東地区の会員企業が多い中、同社の存在は際立っている。
このほか、今年に入ってから200㌧吊りのクレーン車を新たに導入し、生産性向上を図っているほか、共用工具室ではハーネスやドリルやインパクトなどのメンテ工具などを徹底管理している。材料庫のボルトやナット、ヤスリ、缶などの棚には品毎に「値札」を貼り、現場従業員に材料の無駄遣いや工具の大切さを教育することで、ひとりひとりの意識改革を推し進めており、今後は工具や材料にタグ等を活用してデジタル管理へ移行させるという。
整然と整理された共用工具室
熱心に見学する関東運輸局の築山船舶産業課長(中央)
ボルトなど、さまざまな材料に値札が貼られている。
作業コストも部品一式と一個単位で計算可能で、こうした明瞭さと
誠実さの積み重ねが信頼向上にも一役買っている。
二宮社長は「当社は船舶修理を行っているが、工場内での作業以外にも、北海道から沖縄まで国内全域への移動工事やオーストラリアなど海外へフライトして工事対象船舶に乗船しながら移動メンテナンス作業を行うなど、船のための救急車的な工事も担当している。さらに陸上プラント修理、米軍向け工事などを行っている。当社では10年前から社内改革に取り組んでいるが、それ以前は正直すさんだ状況だった。役員を刷新して、あいさつの徹底などの基本から取り組み、女子トイレや会議室などを少しずつ綺麗にしていって改善した。当社でも、こうした取組で社内の意識改革や人材募集で大きく効果を発揮できたのだから、皆様の会社でも必ずや達成できると感じて欲しい」とあいさつする。
同社の社内改革は、材料や部品棚に値札を貼って現場にもコスト意識を持たせることや、大旋盤などの四隅の角にテニスボールでクッション保護し安全に配慮、作業中に電線などに足が掛からないように、作業員の頭上に電線を通すようにした逆U字フレームの設置など、コストが掛らないものが多く、参加者からは「弊社でも早速アイデアを取り入れたい」という声があがり、同社の社内改革に刺激を受けたようだ。